こんにちは、川村です。
この度、ヴァラップミノー5inをリリースさせていただきました。
リアルフィッシュ系のソフトベイトは優れたモデルがいくつもある中で、当初、開発着手にいたるきっかけは “ネコリグに特化” させることでした。
タテ扁平シェイプのソフトベイトをワッキー掛けにすることで、フラットサイド面が抵抗を受けて横方向へと泳ぎ進む。
通称 “ヨコヨコ” と呼ばれるこのメソッドはかつてからあり、ジャーキーJやシャッドシェイプワーム等を用い、水面に引き波を立てながら泳がせる釣法が知られていました。
横方向に泳ぎ進むことのメリットは、護岸や岩盤を突かせたり岸に追い込まれる様を演出できるだけでなく、幅広のフラットサイド面で水を受けることで水を強く押しつつ移動距離を抑えて誘える。また、誘い手とは別方向に向かうことでバイト率を高められるシチュエーションもあります。
ボクは20年ほど前にデスアダーのネコリグで中層からボトムでヨコヨコするメソッドにハマっていた時期があり、藤田京弥さんと対戦した2022年陸王のプラクティスで閃き久しぶりに試したところ、あらためてその効果を再認識した次第・・・京弥神のウエイトが規格外でしたが(^^;
また、ちょっと異色ですが、フリップギルのネコリグでヨコヨコさせるのも、薄身ならではの柔らかな動きとワイドボディによる水押しの強さからか、ギル食いフィールドのみならずルアーパワーともいえるオンリーワンな効果を実感するベイト。
これらのソフトベイトは代用の利かない逸品ながら、そのうえで「ネコリグに特化させたベイトフィッシュタイプ」が欲しい!と、早速手を動かしたのです。
見た目もアクションもリアルにベイトフィッシュを演じてくれる。
よって、リアルアイも必須!
ボディに張りがある方がヨコヨコはしやすいのですが、ピンピンとした硬い動きではなく、魚が身をクネらせて泳ぐ様を再現したい。
また、この手のリグはフックセットの位置がシビアなので、誰でも迷いなくベストなフックポジションにセットできるように。
まずはイメージモックの削り出し、それを元に手作りし、何となくアクション出ししていったのが2023年の5月。
そして7月には、仮金型による1次試作が到着!
ヨコヨコはするけれど、ソフトマテリアルでもしなりが足りずピンピンし過ぎ。
そこで、ボディサイドに切れ込みを入れると動きにしなやかさが出ていい感じに。
切れ込みを入れる間隔も色々試しましたね。
また、体高がありすぎたことで浮き上がりやすく沈めては誘いにくかったことと、
スッポ抜け率が高いことも浮き彫りに・・・
ちなみに当時の仮称は「Wacky Minnow」でした。
一方で、サンプル渡していた草深から、「ジグヘッドリグでも使えるようにした方がいい」との意見。いわゆるパワーミドストが流行り出した頃ではあったのですが、ボクはネコリグに特化させるつもりだったのは前述したとおり。
「んなこと承知のうえでやっとるわい!」とはならなかったのは・・・
ノーマルサンプルと一緒に切れ込みを入れたサンプルも渡しており、それを琵琶湖でジグヘッドリグにしたところ・・・なんと65cmを超えるバスがヒットし、一度は手に触れたもののバラしてしまったとのこと。他にも55クラスをキャッチしてきました。
そして言われた上記の言葉に続き、「あんな個体はなかなか食ってこないはずだから、可能性がある」と。
すでに仮金型が進行していた2次試作にも切れ込みを入れていましたが、ジグヘッドリグまでは想定しておらず。
ネコリグでのヨコヨコ使いとジグヘッドでのミドスト使いを両立するには、形状も素材も見直す必要がありました。
というのも、ヨコヨコはボディサイドに水を受けることでスライドさせるデザイン。
水受けに有利となる体高と、その一方で体高によって損なわれる姿勢の安定化を補うために、腹側のマテリアルを高比重化させていました。
これが “ジグヘッドでも” となると、体高の高さはロールアクションのレスポンスを鈍化させ、高比重化はミドスト時に譲れないナチュラルな水平姿勢を適えてくれません。
さらに、テールの向きにも矛盾というか、相性が・・・
ジグヘッドによるミドストにおいては、実際の魚と同じタテテールはロールアクションの抵抗となるうえ、上下に切るようなギクシャクした動きになりがち。
同じ二股でもヨコ向きかつタイトにデザインされたスプリットテールの方がロールアクションを妨げず、柔らかく繊細なアクションを出すのにうってつけです。
けど、これがネコリグヨコヨコになると求めるアクションではなかったんですね(^^;
ヨコヨコしたときに、水平のテールは水を切ってしまう。
ダメではないけれど、ボクはフラット面で水をあおぐ、本当の魚のような水掻きとルックスにしたいのです。
とはいえ、すでに仮金型を依頼してしまっていた2次試作はネコリグではそこそこいいアクションするも、まだピンピンしすぎ。
ただ、切れ込みによってボディがたたまれやすくなったことと、体高も落としたことでフッキング率は上がったかな。
で、分かってはいましたが、ジグヘッドリグでは腹が高比重マテリアルゆえミドストでの姿勢が尻下がりなうえ、テールアクションもギクシャクして釣れなそ~(^^;
ここからが、ジグヘッドリグも意識したデザイン&比重に舵を切ることになります。
3次試作は、テールも少し閉じ気味にすることでロール時の抵抗を減らすとともに、付け根も少し絞ってヒラヒラとなびくように。
また、背びれをつけ、ワッキー掛けの針先を埋め込むことで初動からベストアクションを発するようにしました。
これをしないと、フックの向きが腹側に回ってしまうことがあり、狙いと逆方向に泳いでしまう問題を解決しました。
平均的には良くなったものの、ヨコヨコでもミドストでもまだしなやかさが足りないのと、テールのなびきもまだイマイチ(-_-;)
そして、ハンドカットでボディサイドに切れ込みを入れていた個体では出ていた、ミドストからの逃がしでボディを震わせる動きも出ず。
あまり切れ込みを深くしすぎるとボディがしなやかになり過ぎてヨコヨコ性能が損なわれることを気にし過ぎました。
比重は塩の含有量を減らしての4パターンを試作も、どれもまたミドストにはちょっと重かったですね。
4次試作はこれらを踏まえ、ボディサイドのリブはさらに深くしただけでなく、一周グルリと囲むように入れました。
これが効果あり!(^^)!
全方向に対してしなりやすくなったことでヨコヨコでのピンピンさが和らぎ、ミドストでのロールアクションもしなやかさで美味しそうになってきました。
リーリングによる逃がしで身を振るようになるも、もうちょっと振り幅が欲しい!
テールも切れ込みを深くし、角度もより狭めたことでロールのキレが増し、それに連れらてヒラヒラとなびくように。
姿勢も水平といっていいレベルですが、スローミドストだとこらえきれず。
あと、ウロコ模様を入れたことで、見た目に繊細な質感になったと思います!(^^)!
それぞれが “もうチョイ”・・・なところまできました!
5次試作では、仕上げの微調整!
もう少ししなやかさを増すために、ボディを囲むリブの深さを僅かに深くし、
さらに、背と腹に入れているスリットもセットするフックシャンク長以上に延長。
ボディの内側からも柔軟性を高めました。
このスリットには副産物もあり、内側に残る空気が微かなフラッシングも発してくれます(カラーによる差はあります)。
テールの切れ込みもさらに深くし、繊細な操作でもなびくように。
塩の含有量による比重は、「背5%に対し腹10%」がミドスト時の水平姿勢を保ちつつ姿勢も安定化。
さらに、腹は最もソフトなマテリアルに対し、背はワンランクハードが針持ちアップにも貢献(実は工場側からいただいた提案だったのですが、ありがたく採用させてもらいました)。
背と腹でマテリアルの硬度と比重を変えたことで、性能を最大限に引き出せています。
5次試作のアクションを確認し、「これ以上手を入れられるところはない!」と納得のうえ、量産金型を依頼しました!(^^)!
その完成品を手に実釣撮影した五三川では、日並に左右される早春のハズレ日に当たったものの確かな反応を得られ、その後の青野ダムではボトストにて58cmが釣れ、弊社フィールドスタッフからの釣果報告も相次ぎ一安心。
縁あってサンプルをお渡ししていた琵琶湖ガイドの久保田将吾さんは早速ウイニングルアーにしてくれました。
推奨リグは前述のとおり、ジグヘッドリグとネコリグ、そしてブレ―テッドジグのトレーラー。
ジグヘッドのフックサイズは1/0~2/0(モデルによっても異なります)。そして、「90°ラインアイ」と「60°ラインアイ」を使い分けています。
中層で水平姿勢を保っての誘いには90°が適し、結び目がズレないようシリコンパイプ等をラインアイに被せて結び目を固定すればパーフェクト!
ジグヘッドは求めるフックサイズがあることと重心バランスの良さから、ケイテック社のラウンドヘッドかがまかつ社のホリゾンヘッドを選んでいます。
あれば・・・ノリーズのスキップインザシェードもいいですね!
一方、岩場やウィ―ドなどモノに絡めて誘ってくるならガード付きの60°。
青木大介さん監修のハヤブサ社「D-ストライカーヘッドタイプスイム」のスリ抜けの良さは目からウロコでした。
ヘッドに重心が集中していることと2本の形状記憶ガードも細いことにより、シェイクに対するレスポンスも良好です。
ネコリグでの推奨フックサイズは、ワッキータイプの2/0。
ボクはパワーワッキーガード(ハヤブサ)を用いますが、他に、レギュラーガードタリズマン(リューギ)やモスキートモンスター(バリバス)、G・ワッキー(ダイワ)といったモデルもマッチします。
ボディサイドにあるポッチから刺して背中へ抜き、針先を背ヒレに刺して固定すれば、
ベストアクションを引き出せます。
ネイルシンカーのウエイトは自由ですが、水面ヨコヨコも想定するなら0.45~0.9gといったところ(水面だけならノーシンカーワッキーもあり)。
沈めるレンジに応じて1.3g…1.8g…と重くしていきますが、重くするほどヨコヨコ性能は損なわれていきます。
そしてブレ―デッドジグのトレーラー。
ボディに刻まれたスリットはここでも効いていて、スローからファストまでブレ―デッドジグの振動に同調し、柔らかなボディアクションに変換してくれる。
テールを目まぐるしくパタつかせる動きもバイトを後押ししていると思います。
好みのボリューム感へと、頭側をカットして調整いただいてももちろんOKです!
また、テスト中にはジグヘッドからホバストにすると食ってきたことがあり、それに備えてヘッド上部にフックセットの目安となるセンターラインを設けました。
フックは、大き目番手もラインナップされているDストライカータイプホバー一択で、1/0~2/0。
リアルフィッシュ系は形状がある程度決まってくる中で、捕食本能のスイッチを入れるアクションにこだわった自信作です!
フィールドで、その効果を体感していただけましたら幸いですm(__)m